令和元年 舞鶴市議会産業建設委員会調査・視察報告

1.日程

令和元年5月8日(水)~5月10日(金)

2.視察者

今西克己、山本治兵衛、松田弘幸、川口孝文、小西洋一、仲井玲子

3.視察先及び調査項目

日時:8日(水) 10:00~12:00
視察先:加東市(兵庫県)
調査項目:防災・減災の取組について
      ①防災・減災事業の概要について
      ②安取ポンプ場について
      ③事業の効果について
      ④今後の課題等について

日時:9日(木) 10:00~12:00
視察先:山口市(山口県)
調査項目:ICT等を活用したスマート農業の取組について
      ①行政の支援について
      ②スマート農業導入の背景について
      ③スマート農業実現に向けての取組について
      ④導入されている技術等について
      ⑤対象とされている作物とその効果について
      ⑥検証と将来像について

日時:10日(金) 09:30~11:30
視察先:倉敷市(岡山県)
調査項目:観光振興の取組について
      ①倉敷市観光振興プログラムの概要について
      ②倉敷市観光振興プログラム策定の経緯について
      ③今後の課題・展望等について

調査・視察内容

1.防災・減災の取り組みについて (兵庫県加東市)

 加東市役所において、上下水道部工務課長より、資料、パワーポイント及び動画による現状説明と課題等各調査項目について以下のとおり説明を受けた。

(1)防災・減災事業の概要について

 加東市では、「貯める」「備える」「流す」という総合的な治水対策が策定されている。降雨をいったん「貯める」ため、市内に多く点在するため池、水田の活用など、様々な貯水計画を策定し、市民対象の「避難所体験訓練」や「防災給食」「防災研修」等の「備える」ための施策が実施されている。「流す」対策の具体策としてポンプ場の設置が事業化されている。また、防災給食では、備蓄食品を学校給食で提供することにより防災意識の向上につなげるとともに、防災行政無線放送の個別受信機を全戸に配置している。

(2)安取ポンプ場について

 平成16年の台風23号では、床上12戸、床下浸水8戸の浸水被害が発生、以降も豪雨の度に浸水被害が発生。地域住民の強い要望のもと、市では排水ポンプ場の整備計画を策定し、平成25年度国土交通省の事業化及び補助事業の採択などの手続きを経て平成29年度に着工し、平成31年3月24日に竣工した。総事業費は、5億4,400万円、毎秒3.2㎥の排水能力がある。ポンプの形式は、全速全水位型横軸水中ポンプ2台が設置されており、特徴としては水位やポンプの出力調整を必要とせず、排水は強制排出ではなく水位の落差を利用し、樋門経由で排出する方法であった。非常電源として軽油を燃料とするディーゼル発電機を備えている。将来的には、2台の水中ポンプを3台に増設し、毎秒4.8㎥の排水能力の確保も検討している。

(3)事業の効果について

 ポンプ場設置完成後において、未だ検証されるべき気象条件がなく、運用されていないため現時点での効果は確認されていない。

2.ICT等を活用したスマート農業の取り組みについて (山口県山口市)

 株式会社べりーろーど現場ハウスにおいて、同社代表取締役より、資料とハウス現場において現状説明と課題等各調査項目について以下のとおり説明を受けた。

(1)行政の支援について

 山口市では、施設栽培の主力作物であるいちごの生産性を高めるため、地域農業の永続的な発展、地域農業の未来を担う若い就農者の育成、さらには、いちご生産農場日本一に挑戦するという経営方針のもと、平成25年6月に山口県、山口市、JAの支援により「株式会社べりーろーど」が設立された。資本金は、4,800万円、JA山口がほぼ100%出資する農業生産法人としてスタートした。現在の社員は、21名(男性16名、女性5名)で年齢は23歳から45歳までで平均年齢は35歳となっている。

(2)スマート農業導入の背景について

 山口県の主力作物のいちごの生産量が高齢化と担い手不足等により年々減少していく中、山口県の農林総合技術センターと連携し、技術指導を受けながら、若い担い手の育成と就農者の営農意欲確保のため、省力化等次世代を見越したICT技術を導入することとした。

(3)スマート農業実現に向けての取り組みについて

 就業社員の平均年齢は35歳と若く、収穫期には一日当たり15名前後、パート従業員12名ほどが収穫に従事している。株式会社べりーろーどは、敷地面積10haの中にいちごのビニールハウスが36棟、育苗ハウスが6棟ありそのうち電照ハウスは12棟ある。温度管理等に要するオイルタンクが17基、灌水用貯水タンクが32基、井戸が8ケ所、灌水装置が21ケ所あり、全てのハウスにおいて温度、湿度の観測点を配置してモニタリングしている。また、同ハウスでは「UECSプラットホームで日本型施設園芸が活きるスマート農業の実現という研究テーマを実施している。

(4)導入されている技術等について

 導入している技術も大規模なコンピューター制御の設備ではなく、UECS環境制御システムと、サイボーズのKentonという業務改善プラットホームのみである。これらの情報をクラウド上で管理発信し、就業者の各スマートフォンで情報共有している。各就業者の管理上の失念を防止する観点から個々にポイントアラームを設定している。スマートフォンの共有情報に基づきビニールハウス内の温度、湿度管理、ビニールの巻き上げが自動的に行われるなど栽培管理が適宜的確に実施されている。灌水については手動で実施している。

(5)対象とされている作物とその効果について

 UECS制御ハウスは、側窓・天窓開閉装置と温風暖房機を連動させ、ハウス内気温変化を適正に制御し、日中の栽培地体積含有率を一定に維持する循環制御としている。この適正管理により安定的な生産を確保し、10a当たり1トン、金額換算で約100万円の増収となり、昨年度の収益は約1億8千万円となっている。

(6)検証と将来像について

 昨年の収益は、約1億8千万円で社員に十分な給与を保証するところまではいっていない。ひとつ一つをICT化することにより省力化、効率化が見えて来た。ICT導入初年度から大きな効果が見られたが、一方で灌水の制御においてはタイマーのみの制御であり他にもシステムの改善の余地が感じられた。しかしながら、このべりーろーどで働いてみて「将来は独立を考えている若者が何人もいる」とのことで、高齢化や後継者の問題等を抱えるなかで将来において基幹産業である農業に明るい兆しが見られた。

3.観光振興の取り組みについて (岡山県倉敷市)

 倉敷市役所において、文化産業局文化観光部観光課副主任より、資料、パワーポイントによる現状説明と課題等各調査項目について以下のとおり説明を受けた。

(1)倉敷観光振興プログラムの概要について

 倉敷市観光振興プログラムは、全4章にわたって策定してある。第1章では、観光振興の意義をまとめている。これまでの取り組み、観光を取り巻く現状、本プログラムの基本的な考え方、最後に目標数値を定めている。

 第2章では、倉敷の観光の現状と課題について述べている。観光入込み客数は横ばい、滞在時間が短い、観光マーケティングの把握、満足度や平均消費額が全地域よりも低い、遠距離来訪が少ない、欧米圏からの宿泊者数が減少傾向であるなどデータを用いて示している。

 第3章では、観光振興に向けた施策展開について取りまとめている。戦略1では魅力を高める観光資源の創出、戦略2では都市間連携の推進、戦略3では誘致活動の強化、戦略4では受け入れ環境の充実、最後に情報発信の充実となっている。

 第4章は、観光振興プログラムの実現に向けて各主体の役割や観光振興を支える視点をまとめている。

(2)倉敷観光振興プログラムの策定の経緯について

 倉敷市は、美観地区や大原美術館などの観光名所を有しており、もともと観光都市としてポテンシャルの高いところである。平成9年に開業したテーマパーク「倉敷チボリ公園」の効果で年間900万人をピークに観光客数が年々減少、その後同園が閉園してから観光客数は平成27年には460万人に半減するなど観光都市として伸び悩んでいた。

 そこで、倉敷市は、平成28年に時代のニーズに合わせた取り組みとして「倉敷観光振興プログラム」を制定し、観光産業の振興を積極的に推進している。その中心は、少子化による本格的な人口減少時代を迎え、国内の観光客数の飛躍的な伸びは期待出来ない中で、倉敷ならではの新たな観光資源の創出とリピーター(ファン)の獲得、外国人観光客の誘客などを中心に積極的に取り組んでいる。

(3)今後の課題・展望等について

 倉敷市ならではの魅力を活かした「着地型旅行商品」を開発するなど、市内にある観光資源を新たに見直し、積極的に観光プログラムを推進しながら様々な市民の意見を聞きながら観光主体を育てて行く取り組みを目指している。倉敷市では、市内27の会社や店の代表による「倉敷観光振興プログラム推進委員会」を設置し、市のプログラムの内容等を検討している。市の観光振興の取り組みが地元の商店や業者、産業と結びついてはじめて推進されるものである。

4.所感

(1)加東市 防災・減災の取り組みについて

 加東市における防災・減災の取り組みについては、市も市民も防災・減災に強い関心を共有する中で、貯める、備える、流すという総合的な治水対策が講じられている。内水対策として早くから排水ポンプパッケージ車を配置するなど、また、排水ポンプ車で対応できない場合を想定して安取排水ポンプ場を整備している。同ポンプ場については、前述しているが、排水について樋門を経由して排出する方法であるが、排出口の位置形状が確認できなかったことと、実際に外水位と内水位の水圧が加わった中での排水が未検証なので今後の検証が必要である。

 また、年間約800万円の維持管理費が必要であり予算面での整理が必要である。

 本市の高野川、伊佐津川のように豪雨と高潮が重なる時は内水が逆流し浸水被害が発生、由良川流域における各輪中堤内に発生する内水による住家の浸水被害の軽減対策には、水位の急激な変化に対応でき、低水位での起動が可能な加東市が採用した全速全水位型横軸水中ポンプが常設の排水ポンプ場として有効であり、内水対策の事業として整備された安取排水ポンプ場の視察は本市の整備計画に大いに参考になった。

(2)山口市 ICTを活用したスマート農業の取り組みについて

 山口市では、施設栽培の主力作物であるいちごの生産性を高めるため、地域農業の永続的な発展、地域農業の未来を担う若い就農者の育成、さらには、いちご生産農場日本一に挑戦するという経営方針のもと、平成25年6月に山口県、山口市、JAの支援により「株式会社べりーろーど」が設立された。

 導入している技術も大規模なコンピューター制御の設備ではなく、UECS環境制御システムと、サイボーズのKentonという業務改善プラットホームのみである。これらの情報をクラウド上で管理発信し、就業者の各スマートフォンで情報共有している。スマートフォンの共有情報に基づきビニールハウス内の温度、湿度管理、ビニールの自動巻き上げ、(灌水は一部タイマー)が自動的に行われるなど栽培管理が適宜的確に実施されている。

 本市においても、万願寺甘とう、トマト、いちご、イチジク等のハウス栽培に直ちに応用特化することができることから、今後の生産者の取り組みを支援して行きたい。

(3)観光振興の取り組みについて (岡山県倉敷市)

 倉敷市ならではの魅力を活かした「着地型旅行商品」を開発するなど、市内にある観光資源を新たに見直し、積極的に観光プログラムを推進しながら様々な市民の意見を聞き観光主体を育てて行く取り組みを目指している。

 その中心は、少子化による本格的な人口減少時代を迎え、国内の観光客数の飛躍的な伸びは期待出来ない中で、新たな観光資源の創出とリピーター(ファン)の獲得、外国人観光客の誘客などを中心に積極的に取り組んでいる。中でも、Wi-Fiの環境整備や二次交通の充実、居心地の良い施設作りなど、回遊性を高める観光インフラの整備をしている。

 本市も今後赤れんがパークを中心とした観光整備に着手して行くが、多くの市民と共感できるプログラムの作成と、その力を結集できるかがポイントになってくる。倉敷市では、おもてなし人材の育成について積極的に取り組まれており、市内の観光拠点には多くのボランティアが参画されるなど本市に大いに参考となるものでした。

産業建設委員会調査視察:倉敷市議会議場にて

産業建設委員会調査視察:倉敷市議会議場にて

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